ブラック?ホワイト?250年前の雇用契約。
モーツァルトに慕われ、カルテット(弦楽四重奏)の父と呼ばれたハイドンですが、彼は1761(30歳)年から90(60歳)年の30年間、エステルハージ侯爵家に仕える宮廷音楽家でした。
今から約250年前にハイドンとエステルハージ家の間でむすばれた雇用契約書を要約したものが以下14条の箇条書きです。
1 楽長ヴェルナーは聖歌隊の音楽を担当するので、彼に服従せよ。ハイドンはそれ以外の演奏やオーケストラ全ての指導権を持つ。
2 ハイドンはエステルハージ家の従僕としてふさわしい行動をとること。部下の楽員に粗暴な態度をとらず、温和、寛大、率直かつ沈着であること。賓客の前で演奏するときは制服(白の靴下、白のリンネル、かつら)を着用する事。
3 楽員を指導し、彼らの模範になるように不当な交流を避け、食べ過ぎず、飲みすぎず、話し過ぎず、平和を保つように部下を感化すること。
4 命じられた音楽を作曲する義務がある。それらを他の人に与えてはならない。また、許可無く他の人のために作曲してはならない。
5 昼食の前後には次の間に控え、公が楽団の演奏を希望されるか否かを伺うこと。希望の場合は楽員に伝え、彼らが時間を守るように注意・確認すること。
6 楽員たちの間に不和・苦情が起きたときは、調停すること。
7 すべての楽譜と楽器を管理し、不注意・怠慢によって破損した場合は責任をとること。
8 歌手や団員を訓練すること。また本人も楽器練習に励むこと。
9 部下にこれらの義務を守らせられるよう、契約書のコピーを与えること。
10 規則を遵守し、秩序ある楽団運営をすること。
11 年棒は400グルデン。年4回の分割払い。
12 従僕たちの食卓で食事をとるか、代わりに食事手当1日半グルデンを受け取ること。
13 3年契約とし、満了時に退職を希望する場合は6ヶ月前に届けること。
14 これらを守るならば3年間の雇用を保証し、楽長に昇進させる可能性もあるが、反するならば公はいつでもハイドンを解雇できる。
以上
年俸については、当時700グルデンあれば人並に家庭を養えると言われていたようですので、大雑把に見て、1グルデン=1万円とみて良いかと思います。
また、この他に、月額47グルデン50クロイツァー(50万円くらい?)と1日500グラムの牛肉及びワイン2.8リットルとする資料もあります。
ハイドンが仕えたエステルハージ家は17世紀からブドウ栽培とワイン醸造を手がけてきました。ハイドンが演奏に使ったホールは今もオーストリア東部のアイゼンシュタッドに残されています。
写真は、数年前にそこへ行った時のものです。
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